天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「カードシステムを、完成させるおつもりですか?」
半壊した十字軍本部内。移転先は決まっていたが、白髭の男は、まだ建物内から動かずにいた。
アメリカにより回収され、空っぽになった格納庫を前にして、後ろにいる部下の女の言葉に、白髭の男はフッ笑った。
「この力を得れば…人間は再び勢いを増します」
「いや…」
白髭の男は、首を横に振り、
「その逆だよ」
天井を見上げ、吹き抜けになっている空を見つめた。
「え」
驚く女に、白髭の男は言葉を続けた。
「このカードシステムができあがれば…最初は、平等と感じるだろう。しかし、消耗品となった魔力を奪い合うことになる。それにだ…」
白髭の男は振り返り、
「魔力の補充が、魔物からである限り…人は、必ず戦わなければならなくなる。その意味は…人間だけでなく、魔物も目の前に獲物を得ることになるのだよ」
「殺し合いが始まると?」
「重要なのは…魔物と人間ではない。核ミサイルを回収したあの国も、魔物と戦う為ではなく…人間同士の牽制の為に、力を集めている」
白髭の男は前を向き、
「人間は、カードシステムによって…一つにまとまる機会を失ったのだよ」
にやりと笑った。
「だったら…カードシステムは、いらなかったと!」
衝撃を受けた女は、声を荒げた。
しかし、白髭の男は首を横に振り、
「人間が、一つにまとまる為には…滅ぶしかない。国も社会も住む家も、家族も友達も恋人も…失った時、人間は一つにまとまるだろう」
白髭の男は笑いながら、振り向き、
「後悔とともにな」
ゆっくりと歩き出した。
はっとして、頭を下げた女の横を通り過ぎていく。
「故に…あの女が、如何に凄かろうと、報われることはない!人間から真の意味での救世主が現れることは、あり得ない」
白髭の男は、前を見つめ、
「人間にとって、真の救いは、滅びの中にしかないのだ」
胸で十字を切った。
半壊した十字軍本部内。移転先は決まっていたが、白髭の男は、まだ建物内から動かずにいた。
アメリカにより回収され、空っぽになった格納庫を前にして、後ろにいる部下の女の言葉に、白髭の男はフッ笑った。
「この力を得れば…人間は再び勢いを増します」
「いや…」
白髭の男は、首を横に振り、
「その逆だよ」
天井を見上げ、吹き抜けになっている空を見つめた。
「え」
驚く女に、白髭の男は言葉を続けた。
「このカードシステムができあがれば…最初は、平等と感じるだろう。しかし、消耗品となった魔力を奪い合うことになる。それにだ…」
白髭の男は振り返り、
「魔力の補充が、魔物からである限り…人は、必ず戦わなければならなくなる。その意味は…人間だけでなく、魔物も目の前に獲物を得ることになるのだよ」
「殺し合いが始まると?」
「重要なのは…魔物と人間ではない。核ミサイルを回収したあの国も、魔物と戦う為ではなく…人間同士の牽制の為に、力を集めている」
白髭の男は前を向き、
「人間は、カードシステムによって…一つにまとまる機会を失ったのだよ」
にやりと笑った。
「だったら…カードシステムは、いらなかったと!」
衝撃を受けた女は、声を荒げた。
しかし、白髭の男は首を横に振り、
「人間が、一つにまとまる為には…滅ぶしかない。国も社会も住む家も、家族も友達も恋人も…失った時、人間は一つにまとまるだろう」
白髭の男は笑いながら、振り向き、
「後悔とともにな」
ゆっくりと歩き出した。
はっとして、頭を下げた女の横を通り過ぎていく。
「故に…あの女が、如何に凄かろうと、報われることはない!人間から真の意味での救世主が現れることは、あり得ない」
白髭の男は、前を見つめ、
「人間にとって、真の救いは、滅びの中にしかないのだ」
胸で十字を切った。