天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「!」

後ろに向かって体を向けた時には…ギナムは、また剣司の後ろにいた。

そのあまりの速さに、剣司は動けなくなった。

「どうですか?」

刀に手を添えたまま、まったく動けなかった剣司の耳元で声がした。

「私の速さは?」

真後ろで、フフフと含み笑いをもらすギナムに、剣司は振り向き様に、剣を振るったが、ギナムに届くことはなかった。

「無駄ですね」

剣司の真上で翼を広げて、止まるギナム。

空の魔神である彼の飛行能力は、燕に似ていた。

その飛び回る姿も、あまりにも滑らかだった。

「私には、遊んでいる暇はないです。女神の完成する瞬間を見なければならないので」

「クッ!」

剣司が上を見上げれば、ギナムは別の場所にいた。

自由自在に空間を滑るように、飛び回るギナムに、剣司は何もできなかった。

「…だから、終わらせましょうか?」

ギナムの両手の爪が鋭さを増し、剣司を切り裂こうとする。

しかし、どこから来るのか、予測できなかった。

「どこを突かれて死ぬのか、予想しなさい」

無軌道に、頭上を飛び回りながら、翻弄するギナム。

勿論、狙いは決まっていた。

剣司の頭のてっぺんである。

剣司の一番高い場所から体を、串刺しにしょうとした。

「邪魔くさい!」

突然、一階の側面の壁にひびが入ったと思ったら、ふっ飛んだ。

外の明かりが、砦内に射し込んで来た。

「何!?」

思わず剣司への攻撃を中止したギナムは、床に着地した。

「だから、入り口わからないんだったら、作ればいいんだよ」

「その理屈は、わかったが…」

穴が空いた壁から、砦内に入ってきたのは、ジャスティンとクラークだった。

「お、お前達は!」

驚くギナム。

剣司も驚いたが、それが逆に足を動かした。

ギナムの後ろを通って、さらに上に向かう階段を奥に発見すると、走りだした。

「き、貴様!?」

剣司の動きに気付き、振り返った瞬間、ジャスティンの飛び蹴りが、ギナムの脇腹を蹴った。

「余所見するな」


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