天空のエトランゼ〜赤の王編〜
ふっ飛び、床に転がるギナムよりも、階段を駆け上がっていく剣司の後ろ姿に、ジャスティンは首を傾げた。

「誰だ?」

「うん?」

クラークは、剣司やギナムよりも、穴が空いた壁が塞がっていく様子を見つめていた。

その砦の外壁は、自己修復機能があった。 ギラの攻撃のように、細胞そのものを破壊しない限り、勝手にもとに戻った。

(なるほど)

クラークは納得したが、あまり気にはしなかった。

砦を破壊するのが、目的ではなかったからだ。

「お、お前達!ギ、ギラ様は、始末してくれなかったのか!」

ギナムが立ち上がりと、ジャスティンは周りを見回しながら、

「先輩は…じゃなかった。女神は、どこにいる?」

「多分、上だ」

ギナムではなく、クラークがこたえた。長剣を抜くと、ジャスティンに向かって言った。

「さっきの男の後を追え。ここは、俺1人でやる」

「しかし、相手は魔神だぞ!」

ジャスティンの言葉に、クラークは鼻で笑った。

「魔神にも、いろんなレベルがある」

「な、なんだと!」

クラークの言い方に、ギナムはキレた。

「…」

ジャスティンは先程蹴った時の感覚を思い出すと頷き、奥へ向かって走りだした。

「き、貴様!」

本当ならば、ジャスティンを止めなければならないのだが、クラークの馬鹿にした言い方に我慢できなかった。

「人間のガキの分際で、私を愚弄するか!」

翼を広げ、宙に浮かぶギナム。

「見た時からわかったよ。お前とは、相性がいい」

クラークはフッと笑った。

「ガキが!」

翼を折り畳んだギナムは、目にも止まらない速さで、無軌道にクラークの頭上を飛び回る。

しかし、クラークは頭上を見上げることなく、床を見つめていた。長剣も下げていた 。

「どこから串刺しにされるか!恐怖しろ!」

ギナムは、クラークの真後ろに回り、背中から爪を突き刺そうとした。

その時、ギナムは床に落下した。

「え」

いつのまにか、翼がなくなっていた。

「フッ」

クラークは振り向くことなく、ただ笑うだけだ。
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