天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「先輩!」

ジャスティンは振り返ると、ティアナに自らのカードを差し出した。

「ジャスティン…」

「魔力は補充してます。途中で、体力を回復させて下さい!」

ジャスティンはそう言うと、前を向いた。

「で、でも…あなたは、どうするの」

心配そうなティアナに、ジャスティンは笑い、カードを押し付けると、

「大丈夫ですよ。体力と体の頑丈さだけが、取り柄ですから!」

一歩前に出た。

「ば、馬鹿なああ!」

ギナムは翼を広げ、羽ばたかせた。

さっきよりも、倍の羽毛が速さを増して、飛んでくる。

「馬鹿は、お前だろ!同じ攻撃しかできないのか!」

ジャスティンは、ブーメランを取り出すと、それを投げつけた。

「ジャスティン!」

「早く行って下さい!」

ジャスティンは、ギナムに向かって走り出した。


「あ…ありがとう!」

ティアナは頭を下げると、ジャスティンに背を向けて走り出した。

その様子を見ていたクラークは、フッと笑った。

「馬鹿が…」

そして、ゆっくりとカードをギナムに向けた。

「ファイヤ…」

「ぎゃあああ!」

ジャスティンの動きとブーメランに気を取られていたギナムは、右側の翼が燃え上がったことに、パニックになった。

「くらえ!」

接近したジャスティンの蹴りが、ギナムの腹を蹴った。

背中から倒れるギナム。

ブーメランは羽毛を切り落とした後、旋回して、後ろからジャスティンに戻ってきた。

「痛っ!」

ジャスティンは顔をしかめた。

戻ってきたブーメランを掴もうとして、失敗したのだ。

「本当に馬鹿だな…」

クラークは、ジャスティンの隣に来ると、手を掴んだ。

「わ、わかってたのか?」

驚くジャスティンに、クラークはため息をつくと、カードを発動させた。

「先輩の前だからって、強がりやがって…」

ギナムの攻撃を、すべて防いだ訳ではなかった。一部は、腕に突き刺さっていたのだ。それも素早く、抜いただけだった。

< 624 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop