天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「テ、ティアナ・アートウッド!?」

実験室に入ってきたティアナの姿を見て、グレイは落とした日本刀を掴んだ。

「グレイ・アンダーソン…」

ティアナはゆっくりと、グレイと繭に向かって歩き出した。

「来るな!」

グレイは震える両手で、日本刀を握り締めながら、泣いていた。

「お、俺は…グレイ・アンダーソンじゃない!本当の名は…」
「お兄ちゃん…」

その時、後ろから声がした。

「え…」

グレイの後ろで、繭が真ん中から二つに割れた。

中に入っていた培養液が流れだし、グレイの足下を濡らした。

「リ、リタ!」

振り返ろうとしたグレイは、途中で動きを止めた。

「!?」

ティアナは、目の前で起こった信じられないことに目を疑った。思わず、足が止まった。

「うぐわっ!」

グレイは口から、血を吐き出した。

「お兄ちゃん…を殺す…」

リタは目を瞑ったまま、呟くように言った。

「そしたら…あたしは、生まれ変わる」

リタの目から、涙が流れた。

「リ、リタ…」

リタの腕が、背中から胸まで貫通していた。

「あたしは…」

リタの声を聞いた瞬間、グレイは理解した。

「ティアナ・アートウッド!」

グレイは、ティアナに向かって叫んだ。

「リタを殺せ!こいつは…もうリタではない!め、女神だ!」

リタの瞼が小刻みに震え、ゆっくりと開こうとする。

「目を開ける前に!」

「だ、だけど…」

ティアナは、グレイとリタまでの距離を考え、モード・チェンジでスピードアップしても、ぎりぎり届くかどうかと見切った。

後ろに回り、リタだけを斬る時間はない。

「は、早くしろ!」

グレイの目から、涙が流れた。そして、ティアナを睨み、

「それが、お前の仕事だ!」

絶叫した。

「うわあああっ!」

ティアナは走り出した。

ティアナの思考を感じ、チェンジ・ザ・ハートが飛んできた。

「モード・チェンジ!」

一瞬でライトニングソードに変えると、切っ先を前に向けて疾走した。
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