天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そこで、一旦…言葉を切り、

「だとすれば…君は、彼女が落とされる瞬間を見たのかい?」

高坂は、最終確認をした。

「…わたしは、何か…鈍い音がしたから…見に行ったら、麻耶が倒れていて…。その時、空に飛び立つ影が…」

少し震え出した理沙を見て、さやかが間に割って入った。

「高坂!彼女は、親友が目の前で死んで、ショックを受けているんだから…そう矢継ぎ早に訊いても」

「もういい…。大体わかったから」

高坂は、ソファーから立ち上がった。

「一応…依頼は受けよう。調べてみるよ。単なる自殺ではなさそうだから」

高坂はそう言うと、理沙を見下ろした。

「…」

理沙は返事をしない。

「…」

高坂も無言になった。

その時、高坂のカードが鳴った。

「失礼」

カードを取り出すと、応答した。

「どうだった?そっちは」

高坂の声に、

「ぶ、部長〜!助けて下さい」

半泣きの輝の声が、返って来た。

「どうして!あたしは、勝てないんだあ!」

後ろで、緑の声がした。

「八つ当たりは、やめて下さい!」

輝の泣き声が続いた。

「生徒会長は、どうだった?」

と訊いても、返事がなかった。

「痛い!痛い!」

と叫ぶ輝の声しか聞こえて来ない。

高坂は、こめかみを人差し指で押さえると、さやかを見た後…理沙を見つめ、

「ちょっと失礼するよ。綾瀬さん…。他に何かあったら、さやかに言っておいてくれ」

頭を下げると、ソファーから出た。

「ち、ちょっと!高坂!」

ソファーから出るまでの高坂の動きを目で追いながら、さやかは止めようとした。

しかし、無言のまま俯いて動かない理沙が気になり、ソファーから立ち上がれない。

「ま、まったく!もお!」

仕方なく…ソファーに座り直すと、理沙の相手をすることにした。

「…お茶、入れ直そうか?」


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