天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「高木麻耶の妹…高木真由か」

彼女を訪ねる為に、輝は一年のクラスが並ぶ…中央校舎二階に来ていた。

自分のクラスもそこにあるとはいえ、別のクラスの女の子を見に行くっていうのは、緊張する。

「ここか」

真由がいると思われる教室の扉に背中をつけ、横目で覗こうとしている輝の姿は…。

「まるで、不審者だな」

突然声がして、輝は慌てて振り向いた。

そこに立つのは、ショーカットの女だった。妙に短いスカートからすらっと伸びた足が、健康的である。

「ゲッ!梨々香」

思わず顔をしかめた輝の反応が、気に入らない梨々香は細長い足で、輝の股間を蹴り上げた。

「キャイン!」

子犬のような声を上げて、輝は一瞬飛び上がっ後、その場で踞った。

「な、何を…するんだよ…」

踞りながらも、輝は梨々香を見上げた。

「フン!」

梨々香は鼻を鳴らすと、腕を組み、

「あんた!ばあ〜かじゃない」

数秒だけ見下ろすと、輝の耳を掴み、強引に引っ張り上げた。

「い、痛い!」

「こっちに来な!」

そして、廊下を歩き、渡り廊下から西校舎へと入った。

視聴覚室や理科室がある西校舎には、あまり人がいない。

さらに、西校舎を上に上がった。四階から上は現在、実質使われていなかった。

四階の廊下に入ると、梨々香は、防衛軍が仕掛けている監視カメラが残っているかをチェックした。

哲也の死により、大月学園の防衛軍は解体し、目立つカメラはすべて、生徒達に撤去された。

しかし先日、舞が使ったように、隠されたカメラは未だに撤去されていなかった。

その理由は、生徒達の安全を確保する為と、防犯の為だった。まあ…一部、設置場所に疑問が残るところもあるけど。

監視カメラがないことを確認すると、梨々香は輝の耳から手を離し、大きく深呼吸した直ぐ様、

「てめえは、馬鹿か!」

回し蹴りを輝の尻に叩き込んだ。

「ヒイイ!」

今度は、馬の鳴き声のような声を出し、飛び上がる輝。


< 705 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop