天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「じゃあ…今回の事件も、月影関係?」

輝は痛みも忘れ、起き上がった。

「それは違うと…さやか御姉様が…もとい、如月部長が仰っていたわ」

「さやか御姉様?」

梨々香は言い直したが、輝は聞き逃さなかった。

「…」

しばし…フリーズしたように動かなくなった梨々香の手に、銃が召喚されると、輝の額に銃口を押し付けた。

「知られたからには、死ね」

妙に落ち着いた口調で言う梨々香に、今日一番の殺気を感じた輝は、両手を上げた。

「…い、今…召喚したのか?在学中は…精霊とのけ、契約は禁止されているは、はずじゃ」

勇者を育てる目的がある大月学園では、三年間は妖精や精霊と契約することを、禁じられていた。

それは、基礎である体を鍛える為であった。

武器は、剣や槍は認められていたが…基本、素手での格闘を重視していた。

「じゃかまい!あたしは、こいつだけあればいいんだよ。だから、契約した妖精は、この近くにはいない」

梨々香は、銃口を輝の額にぐっと押し付けた。

「そ、その妖精は…どこに?」

震えながら、輝はきいた。

「知るか!どこにいるだろうさ!あたしは、体に魔法陣を描いて、そこからこいつを召喚できたら、どうでもいい」

「ま、魔法陣って…どこに?」

輝は撃たれないように、何とか話題を変えようとしていた。

「胸だよ!もしも!身体測定があっても、何とか隠せる」

「へえ〜」

感心したように言うと、輝は目だけを動かし、視線を梨々香の胸元に移動させた。

「うん?」

輝の視線に気付いた梨々香は、顔を真っ赤にすると、引き金を引くのではなく、銃底で、輝をぶん殴った。

「どこ見てんだよ」

再び、ふっ飛んで床に倒れる輝に向かって、銃口を向けた。

「負け犬の癖に、変態で!さらに、部長のことをひ、密かに…さやか御姉様と呼んでいたことがばれたからには!死んで貰うしかない」

そして、引き金に指をかけた。
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