天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「…寒気がするわ」

その頃、部室にいたさやかは、紅茶を楽しんでいた。熱いものを飲んでいるのに、一瞬だけ体が震えてしまった。

「風邪ですか?部長」

「風邪というか…悪寒」

もう一度身を震わした後、ソファーに座り直すと、さやかは改めて、紅茶を一口すすった。

「ところで、部長」

そんなさやかを見て、そばにいた新聞部部員が訊いた。

「矢島は、どこに行ったんですか?」

その質問に、さやかはカップの中のレモンティーをもう一度すすった後、

「ああ…情報倶楽部の馬鹿のところよ」

興味なさそうに答えた。

「え!」

その答えに、部員はぎょっとなり、さやかに詰め寄った。

「部長!いいんですか!」

「別に…いいでしょ」

さやかは、ため息混じりに答え、

「馬鹿は、馬鹿同士の方が何とかなるものよ」

ソファーに深々ともたれ直した。




「はくしゅん!」

輝のこめかみに、銃口を当てていた矢島梨々香は、突然くしゃみをした。

その反動で、思わず引き金を弾いてしまった。

「ヒイイ!」

とっさに、首を捻った輝の後ろの壁に、穴が空いた。

「あははは…。ごめん、ごめん〜!風邪かな?」

笑って誤魔化そうとする梨々香に、輝はキレた。

「お、お前なあ!」

「何よ?」

再び銃口を向けられて、輝は仕方なく…両手を上げた。

「すいません…」

なぜか謝ってしまった。

「フン!」

梨々香は開き直り、銃口を向けたまま、後ろに下がった。

「とにかくだ!高木真由に関しては、あたしが探るから!あんたは、手を出すな!」

逆ギレ気味に言い放つと、そのまま廊下から消えた。

「な、何なんだ…」

どっと疲れが出て、廊下の壁にもたれながら腰を下ろした輝。

しかし、そんな輝に安息の日々はない。

突然、カードが鳴った。

「…は、はい」

疲れからか…相手を確認せずに出た輝は、すぐに後悔することになる。

「どうなっている?」

かけてきたのも、鬼だった。
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