天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「え」

少女の言葉で、輝は彼女が誰か…理解した。

「高木真由…さん」

無意識に、言葉が…口から出た。

「はい」

真由は少し驚きの顔を作った後、満面の笑顔を輝に向けた。

「やっぱり…君が…」

輝は、息を飲み込んだ。

(どうして、ここにいる?)

今度は、口に出すことをしなかった。

輝は考え込んだ。

その瞬間、まるで心を読んだかのように、真由は言葉を発した。

「あなたの声が、聞こえたんです。人を憎む心が」

「!」

輝は、目を見開いた。

そんな輝に、真由は微笑みながら、背を向けた。

「姉のことは、気にしないで下さい。あの人は、幸せです」

「え?」

「こんな醜い世界から、逃げることができたんですから」

真由は振り返り、輝に頭を下げた。 それから、ゆっくりと歩きだした。

「ま、待って!」

思わず輝は、真由の背中に手を伸ばした。

「…」

足を止める真由。

「お、お姉さんは…じ、自殺じゃないかもしれないんだ!」

言っていいのか…判断できないまま、輝は今回の捜査の根本を告げてしまった。

「じゃあ…」

真由はゆっくりと、振り向いた。

「殺されたというんですか?」

真っ直ぐに、輝の目を見つめた。

「そ、それは…」

まだ確証も何もないことを、遺族に言う訳にはいかなかった。

輝は心の中で、自分に毒づいた。不用意に、余計なことを言ってしまった。

しかし、後悔しても遅い。

唇を噛み締めて、次の言葉を言えない輝を見て、真由は顔を伏せた。

ほんの数秒なのに、輝は息が詰まりそうになった。

「あ、あのお…」

悩んでいると、校内にチャイムが鳴り響いた。

休み時間の終了である。

輝は、そのチャイムの音に、ほっとしたよう表情を浮かべてしまった。

幸いなことに、真由は頭を下げていた。

輝の表情は見られていないはずだった。

「つ、次の授業が始まるね。行かないと…」

強引に話を終わらせようとする輝が、頭をかけた。
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