天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「これは!?」

服部の形見であるトンファーだった。

「ううう…」

輝は渋々…トンファーを握り締めた。

すると、二匹の内一匹が、ターゲットを緑から輝に変えて、ゆっくりと向かってきた。

「え!」

輝は泣きそうになりながらも、魔物に向かって構えた。

一方…高坂によって転ばされた魔物は、両腕の鎌を床に突き刺すことで、何とか起き上がろうとしていた。

首を伸ばし、高坂に向かって、キイイと奇声を発した。

「チッ!」

高坂は、真由と理沙を確認すると、その前に立った。

「君達は逃げろ!」

と、高坂が叫んだ時、真横を風が通り過ぎた。

「え?」

頬に痛い程の風は、そのまま…起き上がろうとする魔物に向かって吹き抜ける。

「ルナティックキック」

鞭のようにしなった足が、魔物の首筋に叩き込まれた。

「ぐぇ」

魔物の首が付け根から、ふっ飛んだ。

鮮血が飛び散る中、魔物の向こうに着地した黒い影。

「乙女ブラック!」

輝は、目を見開いた。

「間に合ったわね」

理沙は頷いた。

「チッ」

真由は聞こえないように、軽く舌打ちをした。

「生徒会…じゃない。乙女ブラックよ!奥の魔物を頼む!」

緑と輝の方を向いた乙女ブラックに、高坂が叫んだ。

「ええ!」

輝は思わず、高坂を見た。

その隙をついて、魔物は鎌を輝に向かって振り下ろした。

野生の勘が働いたのか…何とか避ける輝。


「ぎゃあがああ!」

ほとんどの人々の避難は、ほぼ終わっていた。

「くそ!貫通しない!」

ステラによって、常に魔力を補充しながら、銃を撃ち続ける梨々香だったが、まったく効いていなかった。

足止めくらいにはなっていたが、河馬に似た魔物も怒りを増す結果になっており、ショッピングモール内を暴れ回り、壁や柱にぶつかることで、建物自体の崩壊の可能性が出てきた。

しかし、ショッピングモール内から出せば、人々の被害は増す。

「くそ!くそ!」

少し疲れの出たきた梨々香の足が、止まってきた。

その変化を見逃す魔物ではない。
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