天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「しかし…」

舞から離れ、九鬼のもとに向かおうとしたカレンは足元がふらつき、よろけてしまった。何とか転けることは防いだが、自分の不甲斐なさに、カレンは笑った。

「一撃でやられるとはな」

虚無の女神の時も、そうだったが…自分の弱さを痛感した。

「仕方ない。相手は、神だ」

九鬼は、そんなカレンに手を貸さなかった。

なぜならば…戦士は自ら立ち上がるものだからだ。

そして、前に向かう時だけ、共に肩を並べる。そういうものだ。

「それに…あなたは、負けていない」

九鬼は、カレンの目を見つめた。

「フッ」

カレンは笑うと、全身に力を込め、真っ直ぐに立ち上がり、九鬼を見つめ返し、

「それでも…勝たなければいけない!人を守る為には!」

拳に力を込めた。

「あわわわ」

そんな2人のそばにいる舞は、慌ててしまった。

恐らく…人類最強の部類に入る2人の会話は、一介の生徒には重すぎた。


「しかし…人は、すぐには成長しないものだ」

そんな2人の会話に、あっさりと入ってきた者がいた。

部室に入ってきた高坂である。

恐らく…人類最弱の部類に入る虚弱体質の癖に、なぜか…堂々としていた。その醸し出す雰囲気こそが、高坂最大の武器かもしれなかった。

しかし、そんな高坂の真実を知っている舞は、一気に緊張から解放された。

ほっと息をつく舞のそばに、高坂の横を通り過ぎた輝と緑が来た。

「焦りは、成長を妨げる」

高坂は腕を組み、頷いて見せた。

「確かに…その通りだわ」

九鬼も頷いた。

カレンは、頭をかき…少し息を吐いた。

「ところで…部長。綾瀬さん達は?」

舞がさらに雰囲気を変える為に、輝達ではなく、高坂に訊いた。

「ああ…。彼女達は、帰ったよ。一応、新聞部の矢島君が途中まで送ってくれている」

そこまで言ってから、

「まあ…何かを仕掛けることは、ないだろう」

高坂は顎に手を当て、考え込んだ。
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