天空のエトランゼ〜赤の王編〜
細められた目が…赤く輝いていることに、九鬼は気付いた。

「あなたは…」

九鬼は、その血よりも赤い瞳に、心が引き寄せられていくような感じがした。

「一体…何者なの?」

綾子に向かって、自然と足が前に出たのを、九鬼は唇を噛み締めてこらえた。

そんな九鬼の様子に、綾子は微笑んだ。

「あなたが、我々側にいたら、嬉しかったのだけど…あなたは、あたしとは違う存在」

「綾子さん…。それに」

九鬼は、綾子の前に出た狼の魔物を睨んだ。

中島を抱きながらも、圧倒的な力を感じさせる冷たい瞳で、九鬼を見下ろしていた。

「この化け物は!」

狼が綾子を庇うように前に出た為、赤き瞳の呪縛から、九鬼は解放された。

「装着!」

素早く乙女ケースを突きだすと、九鬼は乙女ブラックに変身した。


「これが…月の女神が与えた力か…」

狼の魔物は、変身した九鬼の姿を見つめた。

「フン!」

気合いを入れて、構える九鬼。

「面白い!」

狼の魔物はにやりと笑うと、中島を抱えたまま、前に出ようとした。

「おやめなさい。狼王」

その動きを、綾子が制した。

「今日は、その男を助けることと…もう1つ」

綾子は、狼王の前に出た。

「彼女に、お別れを言いに来たのだから」

綾子は、乙女ブラックとなった九鬼の姿を見て、

「これが、あなたの真の姿ね」

また微笑んだ。

「綾子さん。あなたは、何者なのですか!答えて!」

九鬼の叫びに呼応して、乙女ブラックの色が変わる。

黒から、銀に。

綾子の力を感じ、乙女シルバーに進化させたのだ。

「ほお〜」

綾子は、戦闘力が大幅に変わった九鬼に関心した。

「答えて!」

綾子に向かって、蹴りの体勢に入る九鬼を見て、狼王が綾子の前に出ようとした。

「よい」

綾子は腕を横に突きだし、その動きを止めた。
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