天空のエトランゼ〜赤の王編〜
高坂は、バスに乗り込むメンバーの顔を確認していた。自らは、一番最後に乗るつもりだった。

高木麻耶は、前のバスに…綾瀬理沙は後ろのバスに乗り込んでいた。


「ゲッ!」

前のバスに乗った緑は、一番後ろの席に座るカレンと浩也を見て、思わず顔をしかめていた。


「高坂部長は、どちらのバスなんですか?」

二台のバスの真ん中に立ち、チェックしていた高坂の後ろから、九鬼が声をかけた。

「あ、ああ…生徒会長。俺は、後ろだ」

高坂は振り返り、九鬼に微笑みかけた。

「同じですね」

九鬼も微笑むと、後ろのバスに乗り込んだ。

その様子を見つめていると、前のバスから前田が顔を出した。

「高坂!お前も乗り込め!出発するぞ」

前田の言葉に、高坂は首を傾げた。

「まだ全員、集まっていないのでは?」

幾多流は、いないとして…もう1人、高坂の計算では足りなかった。

「ちゃんといるぞ。今田先生!後ろも揃ってますよね!」

後ろのバスに向かって叫んだ前田の声に、バスの入口から銀縁眼鏡をかけた今田が、半身を出した。

「あとは、高坂君だけです」

バスの座席表に目を走らせながら、今田は頷いた。

「だそうだ」

前田は、高坂に目をやった。

「おかしいな」

高坂は首を傾げながらも、バスに乗り込むことにした。こんなことで、言い争う場合ではない。

渋々バスの階段を上り、車内が見えた瞬間、高坂は目を見開いた。

自分が乗り込むのを見ていない…生徒が1人いたのだ。

入口の方を見ているが、高坂を見ていない。なのに…ぼおっとしているのではなく、すべてを見透かすような瞳を、一番後ろから向けていた。

(あの子は…)

高坂の脳裏に、2日前のショッピングモールで出会った生徒の姿がよみがえった。

風のような速さで、瞬きの時で、魔物を倒した生徒。

(彼女だ)

高坂は納得した。彼女ならば、見落とすこともあるかもしれない。

彼女の名は、阿藤美亜。

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