天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「生徒会長!」

「九鬼!」

その様子は、前のバスからも見えた。

落下して行く九鬼と魔物の様子が…。

しかし、それに構っている場合でもなかった。バスは、すぐにカーブを曲がった為、九鬼の様子を最後まで見る事はできなかった。それに、魔物の襲撃は続いていた。

「楽しいわね…」

小声で、リンネが呟くように言った。

「く、くそ!」

高坂は、振り返ると後ろを睨み、窓から飛び降りようとした。

「心配いらないわ」

それを止めたのは、理沙だった。

「!」

自分の肩に手を置いた理沙の顔を見た瞬間、高坂ははっとした。そして、落ち着きを取り戻し、ゆっくりと頷いた。

前のバスにいる浩也も頷いていた。



「装着!」

落下しながら、九鬼は叫んだ。

「キィィ!」

黒い光が、魔物を弾き飛ばすと同時に、九鬼は再び叫んだ。

「月影キック!」

弾き飛ばした魔物の腹に、足を添えると、そのまま真下の川に向かって落下する。

魔物の断末魔も、激突音と水飛沫にかき消された。

水飛沫は、五十メートル上を走るバスからも確認された。

と同時に、その水飛沫の中から黒い戦闘服を着た九鬼が飛び出して来た。

「乙女ブラック!」

先頭を走るバスの前に着地した。その姿を見て、バスの中から歓声が沸き起こる。

「フン!」

乙女ブラックは、バスに向かって走りだした。

そして、その横を通ると、道路を走って追いかけて来ている魔物達を、手刀で切り裂いた。

「とう!」

それから、ジャンプすると、空中にいる魔物に向かって襲いかかる。

「ルナティックキック!」

魔物を蹴ると、その反動を利用して、次の魔物を切り裂いた。

そして、道の側面に聳える山肌を蹴り、再びさらに宙を舞う。

「乙女ブラックが…空中戦をしている」

まだ何もしていない緑が、乙女ブラックの動きを目で追っていた。

「おい!」

そんな緑に、バスに着地したカレンが叫んだ。

「ここからは、しばらく真っ直ぐが続く!頼んだぞ」

「え」

確かに、カーブがなくなり、バスは安定した。




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