天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「心配するな!しかし、気を抜くな!」
少し矛盾したことを口にしながら、前田は自動運転で島を目指す潜水艦の中で、進行方向を睨んでいた。
一応、小型とはいえ、数週間は海の中で、生活できることを前提として造られた船内は、バスよりは広い。
それでも、海中にいるという圧迫感が、生徒達の心を刺激していた。
(海を捨て…陸に上がったもの達の進化の結果である人間が…再び、このようなものを造ることはな)
高坂は、初めて乗り込んだ潜水艦の中で腕を組んでいた。
軍事兵器である潜水艦に、窓はない。
その閉鎖された圧迫感に、皆が黙り込んでいる理由があった。
高坂とさやかが、非公式に島を訪れた時は、ボートで来た。
その時の揺れよりは、潜水艦の方が比べ物にならないくらい、安定していた。
(確かに…人を運ぶにはちょうどよい)
高坂はフッと笑うと、目をつぶって休むことにした。
どうせ…潜水艦の中では何もできないのだから。
何もできない時は、休む。それが、情報倶楽部のモットーになっていた。
(高坂…)
目を瞑った瞬間、高坂の頭に、森田の声がよみがえった。
(人間は、完璧ではない。だから、つねに備えなければならない。何かあった時に、ベストを尽くせるように)
この世界に来て、記憶を失い空っぽになった高坂は、どこか…焦っていた。
そんな時は、いつも森田は笑顔で、こう言った。
(休め…高坂)
最初は、休んでどうすると思っていた。
しかし、今は違う。
焦ってどうするのか。
何もわからず、何もできないならば…休め。
(森田部長…)
高坂は、島に着くまで眠ることにした。
(空っぽだった俺に…あなたは、中身をくれた。とても素敵な中身を)
(いや…違うよ。高坂)
森田は微笑み、
(今のお前は、自分で選んだんだよ。自分がいいと思ったものを)
高坂に頷いた。
(ぶ、部長)
自然と涙が流れた高坂に、森田は近付くと、肩に手を置き、
(記憶を、これからの未来でつくれ)
少し矛盾したことを口にしながら、前田は自動運転で島を目指す潜水艦の中で、進行方向を睨んでいた。
一応、小型とはいえ、数週間は海の中で、生活できることを前提として造られた船内は、バスよりは広い。
それでも、海中にいるという圧迫感が、生徒達の心を刺激していた。
(海を捨て…陸に上がったもの達の進化の結果である人間が…再び、このようなものを造ることはな)
高坂は、初めて乗り込んだ潜水艦の中で腕を組んでいた。
軍事兵器である潜水艦に、窓はない。
その閉鎖された圧迫感に、皆が黙り込んでいる理由があった。
高坂とさやかが、非公式に島を訪れた時は、ボートで来た。
その時の揺れよりは、潜水艦の方が比べ物にならないくらい、安定していた。
(確かに…人を運ぶにはちょうどよい)
高坂はフッと笑うと、目をつぶって休むことにした。
どうせ…潜水艦の中では何もできないのだから。
何もできない時は、休む。それが、情報倶楽部のモットーになっていた。
(高坂…)
目を瞑った瞬間、高坂の頭に、森田の声がよみがえった。
(人間は、完璧ではない。だから、つねに備えなければならない。何かあった時に、ベストを尽くせるように)
この世界に来て、記憶を失い空っぽになった高坂は、どこか…焦っていた。
そんな時は、いつも森田は笑顔で、こう言った。
(休め…高坂)
最初は、休んでどうすると思っていた。
しかし、今は違う。
焦ってどうするのか。
何もわからず、何もできないならば…休め。
(森田部長…)
高坂は、島に着くまで眠ることにした。
(空っぽだった俺に…あなたは、中身をくれた。とても素敵な中身を)
(いや…違うよ。高坂)
森田は微笑み、
(今のお前は、自分で選んだんだよ。自分がいいと思ったものを)
高坂に頷いた。
(ぶ、部長)
自然と涙が流れた高坂に、森田は近付くと、肩に手を置き、
(記憶を、これからの未来でつくれ)