天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「え!え!え!」

頭が一瞬混乱して、訳がわからなくなった前田の横を、アルテミアが通り過ぎた。

やっと頭が落ち着き、はっとした前田は、離れていくアルテミアの背中を見て、

「どうして…あいつが、ここにいるんだ?」

目を丸くした。



「ここが、獄門…いや、極楽島」

無意識に足がすくむ輝。彼の中にいる犬神が、島からの魔力を感じて興奮していた。しかし、輝自身のへたれの防衛本能が、足を止めたのだ。

輝はそのせめぎあいの中、防衛本能に従おうとしたが…敵は、己の中だけではなかった。

「さっさとしろ!」

緑に首根っこを掴まれると、簡単に引きずられ結界を越えた。

「ここまで来て、なにびびってんだ!」

輝に説教しょうとした緑の目の前に、片膝をついて肩で息をする高坂の姿があった。

高坂は、息を整えながら、

「何とか…結界を越えられた」

額に流れる汗を右腕で、拭った。

「あんたはなんで、ここに来たんだ!」

そんな高坂に、つっ込む緑。

「うん?」

高坂は、緑の声に振り返ると…こいつは馬鹿かというような目を向け、

「バスと潜水艦を使ってだ!」

立ち上がると、緑の方に体を向けて胸を張った。

「わかっとるわ!」

緑の飛び蹴りを喰らい、ふっ飛んだ高坂は今日一番のダメージを受けた。

「さ、さすが…情報倶楽部最強の女」

高坂は血反吐を吐きながらも、何とか立ち上がった。

「最強って…へたれと貧弱しかいない部で…」

そこまで言ってから、緑ははっとした。

「そう言えば、舞はどうしたんですか!あいつ、病弱を装っているけど、特待生ですよ!その辺のやつより、強いはずです」

「舞は、休みだ。どうやら、合宿の時期があの日に重なるらしい」

高坂はなぜか、顔を赤らめた。


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