天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「上出来だ!」

高坂は頷いた。

右手に湖ならば、左側が海になる。当初のルートを離れていない。

(それに、まだ…魔物のレベルが低い!)

高坂は拳を握り締めた。

「きゃあ!」

まだ軽くパニックになっている打田に向かって、よつんばになった魔物が突進してくる。

「打田君!」

高坂は横合いから、打田を突飛ばすと、魔物の進行方向に立った。

「部長!」

逃げ回っている輝が、高坂の行動に気付いた。

「輝!右に行け!恐らく、さやか達も湖に向かっているはずだ!」

高坂は、突進してくる魔物を睨んだ。

「部長!」

圧倒的な強さで1人、魔物の群れと格闘している十六の口から、舞が叫んだ。

十六の両手が肘から外れ、日本刀を掴みながら、魔物の周りを飛び回る。

「舞!頼んだぞ!」

高坂も魔物に向かって、走り出した。

「高坂」

そして、飛んだ。

「ジャンピングキック!」

空中を舞う高坂の蹴りが、魔物の鼻先に当たった。

「ぶ、部長!」

輝は絶叫した。

蹴りはヒットしたが、簡単に跳ね返され…高坂の体は宙を舞い、周囲の茂みの向こうへ飛んでいった。

茂みの枝や草花がクッションになり、地面に激突してもダメージは、半減された。

しかし、落ちた場所はゆるやかな坂になっており、高坂は転がり落ちることになった。

「部長!」

輝の叫びも、虚しく…高坂は転がっている間、気を失ってしまった。

どれくらい転がったかわからないが、苔が敷き詰められた湿地帯に体の回転力をとられ、止まった時…高坂は頬に当たる冷たさに、意識を取り戻した。

「ここは…」

濡れた体で、何とか立ち上がったが、すぐに動くことはできなかった。

ましてや、転がり落ちた坂を上がる力はなかった。

「ここは…どこだ?」

高坂の記憶にも、この場所はなかった。

後ろからにんやりとした空気を感じて振り返ると、洞窟があった。

「洞窟だと!?」

高坂は眉を寄せた。
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