天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「生徒会長!だったら、我々も」

いっしょに歩き出そうとするさやかと緑に、九鬼は首を横に振った。

「いえ。あたしだけで行きます。単なる偵察だけですから」

「し、しかし…」

渋るさやかに、九鬼は笑顔を作り、

「すぐに戻ります!」

まるで風のようにその場から消えた。

「生徒会長!」

さやか手を伸ばした時には、もう森の中を疾走していた。

「!?」

それまで、パーティーの中で気配を消していたように目立っていなかった浩也が、顔を上げた。眉間を貫くような感覚に、思わず走り出した。

「な!」

さやかが気付いた時には、浩也も消えていた。

その速さは、九鬼以上だった。一瞬で、九鬼を追い抜いたからだ。

「チッ」

舌打ちして、後を追おうとしたアルテミアの首筋に、カレンのピュアハートが刺し込まれた。

「どこにいく?お前は、ここにいろ」

カレンの静かで殺気のこもった声に、さやかと緑が二人の方を見た。

「ば、馬鹿な!?この気は…」

アルテミアは、剣を突き付けられても気にしてはいなかった。

「有り得ないだろ!」

目を見開き、わなわなと震えだした。

「赤星!」
「人の話を聞け!」

苛立つカレンが密着した状態から、ピュアハートを横凪ぎに払った。

しかし、それよりも速いアルテミアの回し蹴りが、カレンの耳元に叩き込まれた。三半規管を揺らされ、思わずふらつくカレン。

アルテミアの反応の速さは、カレンの神経伝達より速かった。だから、端から見たら、カレンが剣を振るおうとしたことにも気付かなかっただろう。

「邪魔だ」

アルテミアはカレンを一喝すると、そのまま森の中に飛び込んだ。

「ま、待て!」

カレンは片膝を地面につきながらも、叫んだ。

「アルテミア!」

思わず口にしたその名前を聞いて、さやかと緑は絶句し、顔を見合わせた。

「あ、あの子が…天空の女神!?」

「あの…ブロンドの悪魔…」

各々に呟いてから、

「え―!」

驚きの声を上げた。

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