天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な!」

幾多は、初めて後ろに下がった。

勿論、恐怖からだ。

赤星浩一と出会い…丸くなったアルテミアであるが、本来は魔王の娘にして、翼あるすべての魔物を率いる女神である。

一歩間違えば、人間の天敵になっていたはずだ。

「お母様!」

幾多に向けられた殺気に気付き、フレアはすぐに立ち上がると、アルテミアの背中に攻撃を仕掛けた。

炎を纏った蹴りが、アルテミアに叩き込まれた。

しかし、防御すらしないアルテミア。

「フン!」

気合いを入れると、それだけでフレアを吹き飛ばした。

「お母様!」

地面に転がるフレアを見て、怒りから浩也の魔力が上がる。

「フフフ…」

その様子を見て、幾多は笑った。

「何をしている…逃げろ」

変身が解けた九鬼が、ふらつきながら、幾多に向かって言った。

「逃げる?」

幾多は眉を寄せ、

「どうしてだ!こんな面白い茶番劇を目の前にして、チャンネルを変える視聴者がいるかい?」

両手を広げた。もう先程の恐怖は、興奮にかき消されていた。

「何?」

九鬼は、幾多を軽く睨んだ。

そんな九鬼を見て、幾多は鼻を鳴らし、

「君は昔から、何事にも首を突っ込み過ぎる。時には、少し距離を置き、見守ることも大切だよ」

「お前」

九鬼の口調が変わった。

しかし、幾多はもう九鬼を見ていなかった。

「君も見なよ。今からが面白い」



「うわああ!」

咆哮とともに、一気に魔力のボルテージが上がる浩也。

その様子を見つめながら、アルテミアは切な気に目を細めた。

(やはり…お前は、浩一ではないのだな…)

「よくも、お母様を!」

マグマさえもこえた熱気を身に纏い、自分に向けて突進して来る浩也。

(それでも…あたしは)

アルテミアはチェンジ・ザ・ハートを分離させると、胸元でクロスさせた。

すると、チェンジ・ザ・ハートは十字架を思わす…シャイニングソードに変わった。

(赤星!)

そして、シャイニングソードを横凪ぎに振るった。


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