天空のエトランゼ〜赤の王編〜
その瞬間、浩也の体から炎が消えた。シャイニングソードが、魔力を吸収したのだ。

(お前の為に!)

浩也の胸に、一本の傷が走り…そこから、鮮血が噴き出した。

「は!」

アルテミアの蹴りが、浩也をふっ飛ばした。

背中から、地面に落ちる浩也。

(いや…自分の為か)

アルテミアは蹴りを放つと同時に、浩也に背を向けて歩き出す。

勿論、フレアに向かってだ。

「させない!」

九鬼はアルテミアに向かってジャンプすると、空中で変身した。

「ルナティックキック!」

「邪魔だ」

アルテミアは、シャイニングソードの柄で、九鬼の蹴りを受け止めると、そのまま払い避けた。

「くそ!」

九鬼は着地と同時に、違うの型の蹴りを放とうとした。

しかし、次の動作に移ることはできなかった。

変身が解けたのだ。

それも、眼鏡が半分に割れた為だ。

強制的に、乙女ケースに戻った眼鏡が、修復されるまでにしばらく時間がかかる。つまり、乙女ソルジャーにはなれないのだ。

「それでも!」

前に出ようとした九鬼は突然、視界が回転した。

そのまま、気付いた時には衝撃とともに、地面に倒れていた。

アルテミアは眼鏡を斬っただけでなく、九鬼の顎に柄を当てて、軽い脳震盪を起こさせたのだ。

「さあ〜終わりだ」

アルテミアは、フレアの前に立ち、シャイニングソードを振り上げた。

「お母様!」

浩也が絶叫した。

(例え…お前に恨まれても!)

アルテミアが一気に、シャイニングソードを振り下ろそうとした時、再び後ろから声がした。

「モード・チェンジ!」

「!?」

アルテミアの動きが一瞬、止まった。

後ろにいる浩也が、指輪のついた腕を突きだしていた。

勿論…天空の女神に変わる為だ。

(赤星!)

アルテミアは、目を瞑った。

そして、そのまま…剣を振り下ろした。

一瞬で、フレアは真っ二つになり…消滅した。


「うわあああ!お母様あ!」

浩也の泣き叫ぶ声に、アルテミアは耳を塞ぐことなく、ただ…目を強く瞑った。


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