天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「幾多流を追いましょう!今なら、間に合います」

耳元で話す目玉の言葉に、高坂は前方を睨むと、

「幾多はいい。やつが言った人殺しが気になる。多分…そいつが、空の女神だ」

早足から一気に土を蹴って、走り出した。

「俺は学園のみんなを守らなければならない」

と言った後、高坂は舌打ちし、

「あいつがもしそう言ったならば…もうすべてに、何人か殺されている!」

さらにスピードを上げた。 なぜか…幾多のことが少しわかっていた。

「幾多はどうするんですか!」

「今は捨て置く!この島にいる生徒達を守る!それに、この島には!」

途中まで叫ぶように言った高坂は、急ブレーキをかけた。

「部長!?」

思わず肩から落ちそうになった目玉が、高坂の服を掴み、必死にしがみつく。

「…高木君」

高坂の目の前に、高木真由がいた。

ボロボロになった制服を身に纏っていたが、悲壮感よりも…どこか気品を感じる真由の姿に、高坂は駆け寄るよりも、構えてしまった。

しかし、こんな高坂の反応を裏切るように、真由は膝から崩れ落ちるように倒れた。

「た、高木君!」

はっとした高坂は、地面に倒れ込んだ真由のもとに走った。

「大丈夫か!」

そして、真由を抱き上げた時…胸元がはだけた。

「うん!」

男の性で思わず、目が行ってしまったが、慌てて顔をそらした。

「部長!」

そんな高坂の耳元で、目玉が声を張り上げた。

「うん?」

高坂の頭に、一瞬だが…目に映ったものがよみがえった。そして、おもむろに胸元に視線を戻すと、目を細めた。

「…傷?」

一直線に、真由の胸元に走っている傷痕。それは、最近できたものではない。

「これは!?」

高坂がまじまじと、真由の胸元を見つめていると、しばらくして前から、妙な視線を感じた。

「うん?」

顔を上げた高坂の視線の向こうに、軽蔑の眼差しを向ける輝達がいた。

どうやら、十六から離れた目玉は本体と繋がっているらしく、電波を辿ってやって来たようだ。

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