天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「休憩所って…何ですか?」

高坂の後ろをついて歩く輝が、訊いた。

「隠れ家みたいなものだ。合宿所まで辿り着く体力がなくなった者の為に、用意されたと思う」

高坂は真由を抱きながら、茂みの中をかき分け、目で左右を確認していた。

「されたと思うって、どういう意味ですか?」

周りを囲む緑の深さが、数メートル向こうも見えなくしていた。その為、輝は少し怯えていた。

「場所がわかりにくいんだ。目印になるものはでかいんだが…この自然の中では、意識していないと、あることにも気付かない」

高坂は進みながら、記憶を手繰っていた。二年間ほったらかしにしていた島は、生い茂った草木が雰囲気をまったく違うものに変えていた。

「公式の地図にも載っていないのよ」

日本刀を左右に構えながら、サーモグラフィ装置を稼働させ、周囲の魔物の体温を感知しながら進む十六の口から、舞が答えた。

実世界から来た兜によって、強化改造された十六は、いろいろな機能を有していた。

「見つけた」

高坂は、進路を塞ぐようにいきなり現れた巨木に駆け寄った。

樹齢何百年かは、わからない。

その巨木の根本に、刻まれた大月学園の紋章を発見した。

「やるぞ」

高坂が紋章に手を当てると、そこから光が放射され…魔法陣が出現した。

「潜るぞ」

高坂はそう言うと、真由を担いだまま…魔法陣に飛び込んだ。すると、吸い込まれるように…高坂の姿が消えた。

「転送されるのか」

舞の声の後、

「しゃらくさい!」

十六は飛び込んだ。

「一旦休めるのは、有難い」

打田も続いた。

「やっぱり〜息が詰まるよ」

頭をかいて、輝が続こうとした。

その時、虎に似た魔物が茂みから飛び出して来た。

「え」

唖然として動きが止まった輝を後ろから、梨々香が蹴った。

「早くしろ!」

「うわあ!」

そのまま、魔法陣の中にバランスを崩しながら、飛び込んだ輝。

「ちっ!」

舌打ちしながら、梨々香はマシンガンをぶっ放した。





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