天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「…」

ふっ飛んだ巨木を見つめ、高坂は拳をぎゅっと握り締めた。

跡形もなくなった巨木。そのなくなった事実だけではなく、もう休憩所に入れないことを意味していた。

「すぐに出ていなければ…休憩所に閉じ込められていた」

高坂の口からやっと出た言葉に、輝はぎょっとなった。

「え!」

「く!」

高坂は顔をしかめた。

「一体、誰が?」

梨々香と打田も、巨木の跡を見つめ唖然としていた。

「部長…」

高坂の隣に、十六が来た。

「わかっている」

高坂は頷き、巨木に背を向けると、

「ここから離れるぞ。休憩所以外にも、休める場所はある」

歩き出した。

「た、高木さんは!大丈夫でしょうか!」

輝は、高坂の遠ざかっていく後ろ姿に訊いた。

「心配するな。彼女なら大丈夫だ」

高坂は振り返ることなく、答えた。

「探しましょう!この島で1人では危険です」

輝の言葉に、高坂は足を止めた。

「輝…」

そして、後ろを振り返ると、真剣な顔を向け、

「確信が、持てたことだけ言おう。でないと、命に関わるからな」

「部長?」

「輝…いや、打田君と矢島君も聞いてくれ」

高坂は、三人の顔を交互に見てから、言葉を噛み締めるように衝撃的な事実を口にした。

「高木君は…人間ではない」





ほぼ同時刻。

合宿所で、イライラしながら、腕を組んで食堂内を行ったり来たりする絵里香のそばに、口許に笑みを浮かべながら、リンネが来た。

「どうしましたか?」

リンネの言葉に、絵里香は足を止めた。

「上野先生…」

絵里香はリンネを見ると、ため息をつき、

「嫌な予感がするんです。今回の合宿は…今の内に中止にした方が…」
「それは、できないでしょう」

絵里香の言葉の途中で、ぴしゃりとリンネが言い放った。

「上野先生…」

絵里香は、目を見開いた。

「今回の合宿には、学園の支援者からの要望もあります。それは…ご存知のはずでは?」

リンネは真剣な顔を向けながら、心の中でほくそ笑んでいた。
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