天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な、なめやがって!」

加奈子は着地と同時に、後方にジャンプすると距離を取り、口を女生徒に向けて開いた。

女生徒は、そんな加奈子の動きをただ見つめていた。

「喰らえ!」

口から、毒を含んだ炎が放たれた。

廊下中の空気を焼き尽くす炎の塊が、女生徒を包む。

「無駄だ」

炎は、突きだした女生徒の手のひらに吸い込まれる。

「あたしを焼きたければ、少なくともマグマ以上の火力を放て!あたしを痺れさせたければ…やめておけ」

いつのまにか、目の前まで移動した女生徒が、加奈子を睨んだ。

「あたしに、人間を殺す程度の毒は効かない」

その鋭い視線に、加奈子は後退った。

「か、神!」

その言葉に、加奈子ははっとして、 思い出していた。

「貴様の世界の方が、あたしには毒だったがな」

女生徒は笑った。

「そ、そうか!」

なぜ…すぐわからなかったのか。

加奈子は自分の愚かさを、嘆いた。

実世界で、圧倒的な力を持ち…その力を目にした為に、九鬼達を裏切る結果になった…恐ろしい人物。

それが、女神テラである赤星綾子。


その綾子を、簡単に殺した者がいた。

敵討ちの為に、九鬼を異世界に旅立たせた人物…いや、人物と言っていいのか。

その者は、人間ではなく…女神であり、この世のものとは思えない程の美貌と力を持っていた。

ブロンドの髪と、風と雷鳴を従えし…女神。

その名は…。


「アルテミア!」

加奈子は震え出した。

「て、天空の女神…アルテミア!!」

そこまで言った瞬間、加奈子の体がくの字に曲がった。

「その名を、気安く呼ぶな」

と同時に、加奈子の背中からアルテミアの拳が突き抜けた。

「て、天空の女神が…なぜ…うぐう!」

加奈子は口から、今度は血を吐き出した。

「お前には、関係ない」

と言った時には、アルテミアは加奈子の後ろを歩き出していた。

「ど、どうして…」

加奈子が廊下に崩れ落ちるのと同時に、九鬼が飛び込んできた。

「加奈子!!」
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