天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「このあたしが…」

胸と背中から、血を噴き出す加奈子に、九鬼はかけ寄った。

「装着!」

崩れ落ちる加奈子を抱き止めると、九鬼は乙女ケースを取りだした。

「しっかりして!」

乙女ブラックになると、急いで眼鏡を外し、加奈子にかけた。

すると、加奈子が乙女ブラックになった。

全身を包む乙女スーツが、血止めの役割を果たした。

「クッ!」

九鬼は、去っていくアルテミアの背中を睨んだ。

「アルテミア!」

加奈子を抱きしめながら、アルテミアの背中を睨み付ける九鬼。

「フッ」

しかし、アルテミアは足を止めることはなかった。

拾い上げた白い乙女ケースを握りしめると、廊下の角を曲がった。

「逃げるか!」

加奈子を廊下の壁に、もたれさせると、九鬼は生身のままで追いかけようとした。

「やめておけ」

それを、加奈子が腕を掴んで止めた。

「加奈子!」

一瞬動きが止まった九鬼の目に、角を曲がていくアルテミアの手だけが残っていることに気づいた。

人差し指が、窓の外を指差すと、アルテミアの手も消えた。

「な!?」

驚き、横目で窓の外のグランドを見た九鬼は、絶句した。

電流の鎖に絡まった刹那が、グランドの真ん中でもがき苦しんでいたからだ。

「閨さん!?」

驚く九鬼に、加奈子は激しく息をしながら答えた。

「やつは、魔に取り憑かれている」

「え」

「何人かの生徒を殺している。あいつは、危険だ」

加奈子は、右手で九鬼の腕を掴みながら、左手で眼鏡を外すと、廊下の壁にもたれながら、立ち上がった。

「これは、返すぞ。俺は、竜の魔獣因子を持つ戦士!胸に穴が空いたくらいで、死なない!それに!」

そして、九鬼に眼鏡を差し出し、

「乙女パープルでもあるんだ!」

絶叫した。

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