姪は叔父さんに恋してる


顔にも行動にも出さず、私は祈った。

“何を”かは分からない。
“何かを”だ。


「…八智絵。」


叔父さんが口を開いた。


「本当なのか?」とか、「冗談を言うな」とは言わない。
代わりに叔父さんは、答えではないことを話し始めた。


「9年前の夏、初めて親戚で集まった日を覚えてるか?
八智絵が5才の時だ。
他の子ども達もいたのに、八智絵はいつも叔父さんの傍に来てくれたな。

しかしその日八智絵は、一人で別室で眠ってしまった。」


「…………え…。」

それ、覚えてる。

私は物心つかない頃から叔父さんにべったりで、他のいとことは遊ぼうともしなかった…。

その日、叔父さんの後ろにくっついて家中を歩き回るうちに疲れて、一人で寝ちゃったんだ…。

勿体無いことした、って今でも後悔してる。


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