姪は叔父さんに恋してる
叔父さんのために買って来たんだから、最後まで作らなきゃ。
自分でも不安定と分かる手つきでナイフを進める。
「痛っ…。」
途中何度も、ナイフで指を軽く刺してしまったり。
叔父さんがハラハラしているのが嫌でも分かった。
「…八智絵、やっぱり俺が…。」
「もうちょっとだから待って。
こんなの、痛くないから平気!」
やっとの思いで切り分け終える。
そこからウサギの形にしていくわけだけど、実はこれが難しい。
耳のバランスは揃わないし、実(み)はガタガタ。
上手くやれると思ってたのに、腕は思考には付いて来れてなかった。
そしてやっと完成したウサギ林檎の群れ。
少しでも見栄えを良くしようと、持参した紙皿に整列させても個々の歪さは隠せない。
羞恥に顔を俯かせて、私はその林檎を叔父さんに捧げた。