姪は叔父さんに恋してる


名残惜しむように、叔父さんはゆっくりと私から離れていった。

…いや、名残惜しく見えるのは今まさに私自身がその状態だからだ。


広い背中が駅への道を進んでいくのを引き留めるわけにもいかず、かと言って駅まで送るのは叔父さんの面子を守らないことになるから出来ない。

…叔父さんなら、私みたいな子どもを夜一人で家に帰らせるなんてしたくない筈。

その場に足を固定された気分で私は声を張り上げた。

「叔父さんっ!…またね!」

すると叔父さんは、背中を向けたまま軽く手を振って応えてくれた。


本当は顔を向けてほしかった、なんて我が侭は言わない。
叔父さんの行動ひとつひとつが私にとっては凄く貴重だ。

見えていないのを分かっていても、小さくなっていく叔父さんの背中が見えなくなるまで、私は手を大きく振り返していた。

何度も。何度も。
心の中で好きだと叫びながら。


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