先生とアタシの接点

「到着~!」

アタシ達はさっさと車から降りた。


目の前にはディープブルーの海。

両手をいっぱい広げても収まりきらないパノラマ。


天気はいいけど少し波が高い。

そんなところはどこどなく五月のあの海に少し似ている。



海だけど…砂浜じゃないや。

ちょっとガッカリしたかも。

走り回ったりできるような海岸ではなく、ゴロゴロした石が無数に散らばっている。

どんな海を想像してたかって聞かれてもすぐには答えられないけど、きっとあの海がアタシの中にずっとあるんだと思う…。


「写真…撮るか?」

優人の手にはデジカメがスタンバイしていた。

写真…撮りたいなぁ…。



「撮ろっ!?旅行に来たんだし。」

絵里がせかすように言った。

アタシは心の奥底でひそかに悩んでいたことも忘れて、絵里と優人の間に入った。


シャッターを切った瞬間、アタシはとても幸せな気分になった。

アタシ達は未だプリクラも撮ったことなかったから…。

今の関係では夢だった。

それがこんなにも叶うなんて思っていなかった。


みんな…ありがとう。

アタシは心の中で精一杯叫んだ。





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