結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
想いが実ることはないと、姫は分かっているのだろう。
それでも伝えたかったのかと思うと、俺は何も言えなかった。
姫の想いを受け入れることも出来ず。
姫に嫌われる覚悟もなくて、拒絶も出来ない。
何か言葉を掛けねば、姫に失礼だというのに。
姫に恥をかかせることになるというのに。
何も、言えなかった。
しばらく俺の言葉を待っている風の若菜姫だったが、それでも俺が何も言わないのを見て、泣き顔から無理に笑顔を作った。
「困らせてごめんなさい」
本当は、そんな顔をさせたくないのに──
それでも俺は何も言えず、静かに一礼をして部屋を出て行くことしか出来なかった。