結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
「わかっておるのか?
サムライになると、得るチカラは大きいが、失うものもある」
深く様々な感情を織り交ぜた父の瞳を見つめ、俺は頷いた。
「承知しております。
チカラは膨大になれど、命は削られ、子をつくることなりません。
しかし父上もご存知かと思いますが、翠の国にヨロイが導入されたとのこと。
さすれば、拮抗しうるチカラは必ず紅の国のためになります。
ひいては土岐原家の繁栄にも繋がるかと」
父は ふ、と息を吐くと、俺を見つめ返し、頷いた。
「それだけ決心が揺るがぬなら、好きにするがよい」
その言葉に俺は深々と頭を下げ、書斎を後にした。