結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
本意はそこにないことに、父は気付いただろうか。
気付いて送り出しているような気もしたのだった。
ふつりと辞めた書物係で、何か感じるものがあったのだと思う。
土岐原の血筋は兄が絶やすことなく継いでくれるから、俺はサムライになれる。
サムライになると生殖能力がなくなるため、縁談はなくなる。
一生、姫しか愛すつもりがないのだから、妻をめとりたくはないし、子をつくるつもりもない。
それに、サムライになると短命になるというが、姫への叶わぬ恋慕を抱えて生きる時間は短い方がいい。
手に入れた強い力で、
国を守り、姫を守る。
俺に都合のいいことばかりだと思った。