結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
紅の国の行く末
次に意識がはっきりしたのは、だいぶ経ってからのようだ。
鈍く痛む頭を押さえて起き上がると、がらんとした部屋に邑楽の姿はなかった。
立ち上がろうとして床に手をつき、袖から伸びた腕に一瞬ぎょっとした。
黒い塊。
腕に三つずつ、体にも、足にも、……顔にも。
ゴツゴツとした丸いつやつやの黒い珠。
「サムライに……なったんだな……」
そう呟いたとき、邑楽が部屋へ入ってきた。
「気分はどうだ?」
開口一番に言霊を言わされ、サムライ化が出来るか試させられたのちやっと、体を気遣う言葉が出てきた。
悪くないと答え、今日の日付をきく。
ふてぶてしい笑いと返ってきたのは、驚愕の事実だった。