結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
ふつふつと沸き上がるのは、己への憤りと、翠の国への怒り。
じくじくと痛みだした珠たちに構うことなく、サムライ化したまま翠の国へ向かおうとしたその時、後ろに気配を感じた俺は勢いよく振り返った。
「ヨロイ…!?」
何故、こんなに近くに来るまで気付かなかったのか。
今俺の背後に居るということは、城から来たことになるのだ。
そんな俺の疑問に構うことなく、ガシャリガシャリと耳障りな音を立てながら、四つの足を不器用に動かしてヨロイが俺に向かって歩み寄った。
刀に手をかけた俺に、ヨロイから声が響いてきた。
「紅の国にサムライがいるなんて、お父様には聞いてなかった」
年端もいかぬ幼子(おさなご)の声だ。
からからと笑いながら、純真無垢な透き通ったその声は、言った。
「殺したら、褒めてもらえるかな?」