結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
その俺たちが仕える、紅の国を治める領主は紅 靖倖(クレナイ ヤスユキ)様。
元服をしていよいよ紅家に仕えるというときに、謁見に行った。
殿の傍らには、齢12になったばかりの若菜姫がいた。
黒く艶やかな髪をゆったりと後ろへ流し、白磁のようなすべらかな肌に赤い唇。
大きな黒い瞳は好奇心に満ち、長いまつげは愛嬌を振り撒くようにまたたいた。
そんな麗しい姫にみとれていると、少し恥ずかしそうに、父親である靖倖様に何事かを囁いた。