結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
がばりと飛び起きたつもりだった俺だが、実際は力尽きたままの体勢でいた。
立て続けにサムライ化をしたことで、酷く体力を消耗したらしい。
なんだか夢を見ていたような気もするが、中味は全く覚えていなかった。
ただ、無性に姫に会いたかった。
どうかご無事でと願うばかりで、一向に指先ひとつ動かせないことに腹立つ。
思わず「あのヤブめ」と呟いたが、そうでないことはわかっていた。
ざり、と近くで地面を踏む音がした。
「ヤブとは失礼な奴だな。
せっかくお主のために、遥々紅くんだりまで足を運んだと言うのに」
頭の上から降注ぐ声に、目だけを向けた。
「……邑…楽……」
「邑楽様、くらい言えんのか。
まあいい。
お主に手を貸しに来た」