結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
微かな機動音がした。
注意深く見渡した俺の死角から、一閃。
腕を切りつけられた。
「ぐっ……」
幸い大きな傷ではなかったが、相手の動きが全く見えないことに苛立つ。
最上階に昇る階段から、ゆっくりと下のこの階に向かって降りてくる影が見えた。
「六合……」
呟いた俺に、愉快そうに微笑む。
「おやおや。
名乗った記憶はありませんが、ご存知頂き光栄です。
ええと……鎖迅殿、でしたか?」
そう言われている間にも、ギリギリ皮膚だけ斬られていく。
斬りつけている奴は、余裕だ、とでもいいたいのか。