結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
「何故、俺の名を」
ククッと笑う六合。
いちいち癪に障る。
「愚問ですね。
あなたは若菜姫を拐いに来たのでしょう?
若菜姫がお待ちかねですよ。
……ほら」
取り出したのは、手のひらくらいの鏡だった。
そこに映っていたのは、俺でもこの階の景色でもなく。
「若菜姫…っ!」
驚愕の瞳で俺を見つめる、愛しい人だった。
くしゃり、と姫の顔が歪み、俺を見つめたまま、いやいやと小さく首を振る仕草は、とても儚げに見えた。