結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
俺に向かって一生懸命に何かを伝えようと口を動かすのが見えるが、声は全く聞こえない。
「健気ですねぇ。
そんな姫様に免じて、声を通わせてあげようじゃありませんか」
ふふふ、と意味深な笑いをした六合は、扇子をパチンと鳴らした。
「──なのですっ
早く!
鎖迅さまっ!早くっ!!」
「姫!一体何を……」
「はい、ここまで」
無情な声が、会話を断ち切った。
何を言わんとしたのかは依然わからぬままだが、姫の無事な姿を見、声を聞けた俺は、切り裂かれる肌の痛みも全く感じない。
会話にならない声を途中で切ったということは恐らく、俺に知られたくないことを姫が言っていたのだろう。
「何を考えているのです?」
笑みを張り付かせた顔で、六合が言った。