結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】

「鎖迅さま……機人が!」

機人とは、戦などで欠けた体の一部を金属で補う者。

金剛機のことだろうと思った俺は、姫に安心するようなだめた。

「姫、翠の国のものは皆、倒しました」

その俺の言葉に一時安堵した姫だったがそれはほんの一瞬のことで、再び叫んだ。

「鎖迅さま!
翠の国は囮。紅の国を滅ぼした元凶は、青羽の国だったのです!」

そう言った姫は、唇を固く噛みしめた。

「お父様が私に託して下さった、紅珠(クレナイオウジュ)が青羽の国に……
結婚を急いたのはそれが目当てだったのです。

しかし翠の国が紅の国領を欲したために、このようなことに……」

悔しそうな姫に、俺は縄をほどく手を休めることなく言った。

「では、取り返しに参りますか?」

縄がはらりと落ちる頃には、姫は真っ直ぐに前を向いていた。

「もちろんです」

そう言った姫は、気丈にも俺ににっこりと微笑んだ。

「サムライの力、貸してくれますね?」


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