結ばれぬ恋、許されぬ想い~戦国恋想~【短編】
第一幕〓情念
書物が結ぶもの
翌日から、城へ参内する日々が始まった。
俺の仕事は、書物庫から姫の読みたい書物を運ぶこと。
やってみればなお、小間使いこそやるべき仕事だと思うが、俺は黙って働いた。
朝晩の1日二回、書物庫と若菜姫が読書をする部屋を往復するだけの仕事なので、武芸の稽古の時間などが大幅に削られるということもない。
ひと月ほどすると、若菜姫と二言三言、挨拶や書物の名前以外の会話を交わすようになった。
若菜姫も、最初のうちこそ緊張した面持ちで声を掛けて下さったが、だんだん慣れたらしく、最近は笑顔で話題を持ち出して下さるようになった。