白兎物語
シャーロット「あなたが流した真実の涙。あなた方がウサギの涙と呼んでいた秘宝は宝石の事ではなく、白兎王家の正統な血を引く者が心から流した涙の事なのです。」

ウサ美「マジ?」

シャーロット「マジです。さあ時間がないわ。これを…」

そう言うとシャーロットは青い小さな光の玉をウサ美の手の平に乗せた。
光の玉はしばらくゆらめいていたが、やがてウサ美の手の中に吸い込まれるように消えていった。
手の平には炎のような紋章の跡が残った。

ウサ美「今のは?」

シャーロット「太古の力のカケラ…話すと長くなるわ。さあ、戻ってセシルとの決着をつけるのです。」

するとシャーロットの姿が次第に薄くなって消えそうになる。

ウサ美「待って!まだ聞きたい事が…」

ウサ美の声にシャーロットは答えた。

シャーロット「大丈夫。あなたとは運が良ければもう1回、悪ければあと2回会う事になるから…。その時に答えてあげるわ…。」

そう言ってシャーロットは完全に姿を消してしまった。

気が付くと回りの白い光もだんだん薄らいできていた。どうやら元の空間に戻っていくようだ。

白い光が弱まりやがて完全に消えた時、ウサ美の胸の前に浮かんでいた涙は重力に従いポトリと床に落ちた。

セシル「一体何の手品だい?一瞬光っただけみたいだったが…。」

どうやら先程のシャーロットとのやり取りはわずか数秒間の間の出来事だったようだ。

セシル「結局何も出来なかったみたいだね。さあ、死にな!」

そう言ってセシルは先程のように指をウサ美に向けた。

ウサ美「…」

指を向けられたウサ美は何も言わず、ただ悲しげな表情でじっとセシルを見つめていた。
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