白兎物語
覚悟
またまたウサ美の不注意から今度は荒れ狂う川に落ちてしまった3匹。赤ウサと落下の衝撃で気絶してしまったウサ美を抱えるウサ吉は為す術もなく激流に流される。しかもすぐ下流には滝が迫ってきていた。

赤ウサ「こいつはマジでヤバいぜ!」

ウサ吉「赤ウサ!お前の魔法で姫一人くらいなら一緒に連れて脱出できるだろう?」

赤ウサ「どうだろう、やってみないとわからんが。…しかし、お前はどうするんだ?」

ウサ吉「僕の事はいい。姫を…姫を助けてやってくれ!」

赤ウサ「ウサ吉…」

滝の音はますます大きくなりウサ吉達にあまり時間が無い事を知らせていた。すると何を思ったか赤ウサがウサ吉達に向かって攻撃系の呪文を唱え始めた。

ウサ吉「何をやっている?お前…まさか?裏切る気か!」

突然の出来事に身構えるウサ吉。

赤ウサ「すまんウサ吉…はっ!」

赤ウサから放たれた光がウサ吉達の直前で爆発し、2匹はその衝撃で空中に巻き上げられ対岸まで派手に吹き飛ばされた。

ズザザー!

陸の上を転がるウサ吉、しかし決してウサ美を離す事は無かった。
体中に傷みが走っていたが今はそれどころではない。

ウサ吉「赤ウサ!これは一体!?」

見ると赤ウサは今にも滝に飲まれそうになっていた。

ウサ吉「もう体力が残ってないくせに、無理しやがって。待ってろ!今助けに行く!」

ウサ吉が川に飛び込もうとしたその時、

赤ウサ「来るなウサ吉!お前までいなくなったら誰が姫を守るんだ!」

ウサ吉「でもそれでは…」

赤ウサ「これでいいんだ。姫を守るのが我ら四天王の使命。それをまっとう出来てオレは幸せだぜ。それにウサ吉…好きなんだろ姫の事?」

ウサ吉「それは…」

赤ウサ「ハハハ!相変わらず隠すのが下手だなウサ吉。姫を…必ず姫を守ってやんな。約束だぞ!…怒られてばかりだったけど、これでオレも少しは姫に褒めてもらえるかな…」

滝はすでに赤ウサの目前まで迫っていた。

赤ウサ「どうやらオレはここまでのようだ。フフ、奇跡ってのはそうは起こらないみたいだな…。少しの間だったが楽しかったぜ、ウサ吉…姫…。あばよ!」
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