白兎物語
その言葉と供に赤ウサは波に飲まれながら轟音轟く滝壷の中に消えていった。

ウサ吉「赤ウサぁぁぁ!!!」

絶叫し、その場に崩れ落ちるウサ吉。
しばらく呆然としていたがやがて、

ウサ吉「はっ!姫は?姫っ!姫っ!」

まだ気絶しているウサ美のところに駆け寄り心配そうに覗き込むウサ吉。

ウサ吉「姫!大丈夫ですか?姫!」

何度も声をかけるウサ吉。すると、

ウサ美「…コホッ、コホッ」

どうやら意識が戻ったようだった。安堵の表情を見せるウサ吉。

ウサ吉「良かった!気がついたんですね!良かった…本当に良かった…」

ウサ美は起き上がり辺りをキョロキョロと見渡した。

ウサ美「ここは…何処?」

気絶していたためイマイチ状況がつかめていないようだ。

ウサ吉「助かったんですよ姫。橋から落ちて気絶してたんで覚えていないでしょうが、なんとか対岸へ渡る事ができました。」

あえて赤ウサの事は言わず、今までの事を簡単に説明するウサ吉。

ウサ美「…そうなの…」

そう言ってまだ辺りをキョロキョロと見渡すウサ美。そしてウサ吉の顔を不思議そうに見つめながらこう言った。

ウサ美「ところで………あなただあれ?」

ウサ吉「………!!!」

絶句するウサ吉。夕暮れの太陽が地平線に消え、辺りは次第に夜の闇に包まれようとしていた。
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