白兎物語
老婆「まったく乱暴な奴じゃのう。だって20年後の事なんてわかる訳なかろう。結果的に青バラの種持ってこられたんだから良かったじゃないか。ナイス未来のワシ。」

ウサ美に介抱されながらいつもの口調で話す老婆。

赤ウサJr.「まあ、それはそうだが…。」

そんなやり取りを見ていたウサ吉は何かに気づきウサ美に向かってこう言った。

ウサ吉「姫!せっかくJr.が未来から持ってきてくれたんです。青バラの種を食べて早く記憶を取り戻して下さい。」

ウサ美「そうね!私も早く記憶を取り戻したいわ。」

そう言うとウサ美は思い切って青バラの種を食べた。
老婆とウサ吉、赤ウサJr.はそれをじっと見守っている。

ウサ美「…」

ウサ吉「姫、何か変化はありませんか?」

ウサ美「変化?変化っつったってわかんねーよ。しかしマズイなこの種、賞味期限切れてんじゃねーのか?」

赤ウサ「おい、言葉使いが変わってるぜ。」

老婆「効果が出たようじゃの。」

ウサ吉「戻った!姫が元に戻られた!…正確にいうとまだ本当の姫には戻ってないんだけど、とにかく良かった。」

泣いて喜ぶウサ吉。
しかしウサ美は納得がいってないようだった。

ウサ美「ちょっと待てよ。記憶ったってウサ吉からくわしく聞いてたからな…種食べたってたいして変わらねーぞ。ただ魔王の呪いを思いだして言葉使いが悪くなっただけじゃねーのか?」

ウサ吉、赤ウサJr.、老婆「…あ!」

青バラの種を食べなければ、ほぼ本来のウサ美そのものであったのに…ただ無駄に青バラの種を浪費してしまった一行であった。
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