白兎物語

ガゼット「グゥ…もはやこれまでか…。その姿…お前は？オコジョ族！そうか生き残りがいたのか…。…さあ、殺すがよい。お前にはその資格がある…」

仰向けに倒れ虫の息のガゼットがバジャールに言った。

バジャール「貴様を殺して一族が帰ってくるのなら喜んでやるだろうが、そんな事で死んだ仲間たちは帰ってこない。それにお前の一族にも可愛い子供たちがいるだろう？その子たちを悲しませる事はオレにはできんさ…。」

そう言って空を見上げているバジャールは泣いているように見えた。

ウサ吉と赤ウサJr.、ラビィは互いに顔を見合わせ、バジャールの言動に感心していた。

ウサ美「おい、助けてやるからお前の持っているガブリエルリリーくれよ。」

倒れてるガゼットの横にしゃがみ込み、小枝でガゼットの顔をつっつきながら話すウサ美。

ガゼット「ガブリエルリリー…？恐ろしい花だ…。あれは私の物ではない…。あれは…」

ドンッ！

ガゼット「ぐぉぉ!!!」

そこまで話した時、突然どこからともなく飛んできた光の玉がガゼットを直撃した。

「おしゃべりな男は嫌われるよ。ってもう聞こえてないか？アハハ…！」

光の飛んできた方向から聞こえた声に一同が振り向くと、ガゼットの妻セシルが気を失っているウサ太郎を片手で引きずりながら不敵な笑みを浮かべこちらに近づいてきていた。

その目は悪意に満ち、さきほどまでの優しい表情はすでに微塵も無かった。

事の成り行きが全く理解できないウサ美たちは、ただじっと歩いてくるセシルを見つめる事しか出来なかった…。