先生の青
部屋を出て階段を下り
ダイニングへ向かう。
食卓には 煮物や焼き魚、サラダ
キッチンの鍋の蓋を開ける
………お豆腐の味噌汁
なんでかな?
お腹はすいてたのに
並べられた[ちゃんとした]食事に食欲が萎える。
ご飯いらない
お風呂入ろう
鍋の蓋を閉じて 振り返ると
リビングからお母さんが
ダイニングへ入って来た。
何も言葉を交わすことなく
お母さんは冷蔵庫を開け
ミネラルウォーターを取り出し
グラスに注いだ。
「頭が痛いのよね」
独り言のように呟いて
手に握ってた鎮痛剤を飲む
横顔を私はじっと見てた。
私も「お風呂入ろう」と
独り言を呟いて
お母さんの横をすり抜け
ダイニングを出た。
ジャグジーがついてる
湯船に浸かり
目を閉じると
「はぁ」ため息が漏れる
足を伸ばしても
つま先が どこにも当たらない
湯船の中 ひざを抱えて
身体を温める。
馴染めない。
自分がこんなに
適応力が低かったなんて
比べ物にならないくらい
格段 暮らしが良くなった。
お手伝いさんに
「お嬢様」なんて
呼ばれちゃうのに
でも私より
お母さんの方が大変そう。
お仕事は辞めたけど
義父の大学病院のドクターの奥様方で構成された「婦人会」
今さら着付けだのお茶だのお花だのを習って
いつも頭が痛いって
疲れた顔してる………