先生の青




シャワーを浴びたあと
いつの間にか先生が買ってきた
コンビニのおにぎりと
カップの味噌汁をいただいた



湯気のたつ
ワカメの味噌汁を
すすりながら訊いた



「おにぎりと味噌汁くらい
自分で作らないの?」


先生は
ツナマヨのおにぎりを
頬張りながら


「作らない」と はっきり答えた





てっきり謝ると思ってた



『今朝は本当にごめん』とか

『精神的に弱ってて
つい……』とか

『お互いのために
なかった事にしよう』とか



冷めるような事を
申し訳なさそうに
言うんだって思ってた




だけど先生は何も言わず
かといって何を変える事もなく
いつも通りだった




謝られない事に
ホッとしたけど


だからって
何が救われるわけでもない



先生とヤった事は
大きな事だと思うのに


実は何も意味を持たない
行為でもあるようで



先生の前で平然を装い
悶々と考え込む自分に
すごく疲れた




送って行くと言う先生を
なんとか振り切って
夕方、マンションを出た



歩道をゆっくり歩くと
シーズー犬を連れた
おばあさんとすれ違う



犬が私の足元に寄り
クンクンとつま先の
匂いを嗅いだから
しゃがんで
犬を撫でさせてもらった



ふわふわの毛は手触りが良くて
丸い目は愛くるしい



軽く会釈して
行ってしまった
おばあさんと犬の後ろ姿を
歩道に立ち尽くし
いつまでも見つめてた



先生にとって
私とヤった事は
こんな感じなのかも


近寄ってきた犬を撫で
一時の和むみたいな



西の空に広がる
燃えるような夕焼けは
私を感傷的にさせた




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