先生の青
美術室を出ると
早足で廊下を進んだ。
先生の穏やかな表情からは
寂しさとか未練とか
何も感じられなかった
優しい表情はどこか すっきりしてるようにも見えた
半ば走ってるみたいに
歩調は速くなっていく
押し寄せる切なさは
この胸の痛みは
私だけが感じてるのかな?
切なさは
胸の痛みは
いつになったら消えるの?
自分のクラスの手前で
男子数人の笑い声が聞こえた
それは隣の教室
2-3から聞こえる
男子の笑い声なんて
いつもなら
気にならないけど
「アイツは?アイツ
4組の一ノ瀬 市花」
自分の名前が聞こえてきたから
立ち止まる
………なに?私の話?
「……あー、市花ねぇ」
ダルそうに答えた声の主は
笹森くんだ
「修学旅行までには落とすよ?
ホントーは夏休み用に
欲しかったけどさ
修学旅行に女いないんじゃ
つまんねーし」
でも、なぁ……って
笹森くんは続ける
「市花って意外と
面倒くさいかも」
2-3を通りすぎ
自分の教室に入り
机から本を取り出す
………面倒くさいって
私が笹森くんに何したよ?
つーか、夏休み用とか
修学旅行までって
私、物じゃないし
………面倒くさいかぁ
そう思えば
先生と私って
面倒くさい事だらけだったな
その面倒くさい事が
想いを深くして行った
バカだなぁ、笹森は
恋愛は思い出を彩る
材料にはならない
恋は痛くて苦しい物なのに